タブレットを見ながら会話するプロフェッショナルのグループ。

企業は目先の収益を上げるための営業・マーケティング戦略には焦点を当てていますが、人材獲得戦略が企業の長期的な成長と健全性に影響を与える重要な要素であることを十分に理解している企業は多くありません。

インターネットで簡単に様々な情報が入手できる昨今において、人々はより多くの求人情報の中から、そして企業の情報を自分でリサーチした上で応募先を決めるなど、転職を巧みに操るようになってきています。転職希望者が求人情報にアクセスしやすくなったことで、より良い条件や環境を提供している企業に転職することがかつてないほど容易になっています。そのため、企業は実績のある人材や将来性のある人材を獲得するために、これまで以上に努力する必要があります。結局のところ、企業に適切な人材がいなければ、大きな事業目標を達成することはできないためです。

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優れた人材獲得戦略とは?

福利厚生に力を入れる

企業の価値観をベースとした職場環境や魅力的な給与水準以外にも、福利厚生を充実させることは優秀な人材を確保するのに有効です。マイケル・ペイジの採用・転職ガイド「人材トレンド 2021」によると、テクノロジー、ヘルスケア、金融、製造、コンシューマーで働く人材は、オファーを承諾する際に給与水準および福利厚生(手当)を最も考慮すると述べています。

まずは、社員に福利厚生に関する匿名のアンケートに回答してもらうほか、競合他社がどのような福利厚生を提供しているかについても調査することで、現在の福利厚生が機能しているかどうかを評価することから始めてみるのもいいかもしれません。

在宅勤務制度やバースデー休暇を設けることは、企業が社員の働きやすさにも気を配っているということを候補者に示すことになります。これは、採用候補となる人材が応募に至る決め手になり得るほか、採用した社員が定着する決め手にもなり得ます。

スキル開発の機会

社員に継続的に投資することは、高度なスキルを持つ人材にとって重要なインセンティブとなります。弊社の「人材トレンド 2021」によると、多くの業界のプロフェッショナルにとって、研修などのスキルアップの機会を提供することは、内定を受諾するかを決める上で2番目に重要な項目となっています。このような機会は、社員の個人的な成長や専門性の向上に役立つだけでなく、社員が学んだ新しいスキルを応用することでビジネスにも貢献し、社員の士気やモチベーションを向上させることができます。このようなトレーニングのために毎年予算を割り当て、求人広告に人材育成の取り組みを含めるようにしましょう。

明確な企業ブランドの確立

ミレニアル世代は、2025年までに世界の労働人口の75%を占める見込みです1。このため、あらゆる情報を集めて就職先を選り好みするこの世代の人材を惹きつけて確保するには、かなり強力な企業のアイデンティティが必要となります。オンボーディング体制の改善や企業文化の明確化といったブランディング手法を用いることで、今日の転職市場において候補者にポジティブで持続的な影響を与えることができ、また、採用する人材の価値観が企業の価値観にマッチしていることを確認することができます。

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人材獲得戦略と人材定着率との相関関係

利益を上げることがまず重要とされる昨今においては、数字に目を奪われ、企業の成功を実現する人材の大切さについて忘れがちです。企業の経営陣は、社員のモチベーションを高めて長期的に働き続けてもらうための重要な役割を担います。さらに、優れた人材獲得戦略によって、何年にもわたって企業にコミットするという社員の決断が促されることが理想です。

優れた人材獲得戦略と同様に、優秀な人材を維持するためには、その企業で求められる振る舞いや目標、具体的な業績評価指標によって測ることができるキャリアアップのための明確な道筋を示すことが必要です。成長の機会が不足している、キャリアアップの確信が持てないといった課題は、社員に対して率直なコミュニケーションを頻繁に行うことで容易に解決することができます。

また、定期的にフィードバックが行われるポジティブな職場環境を醸成することも、最も優秀な人材に、自らの意見が重要視されることを示すのに不可欠です。最後に、フレックスタイム制度や育児休暇制度など、金銭で支給されるわけではないものの、社員がワークライフバランスを保つことをサポートするような福利厚生制度を設けることも大切です。

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なぜ人材獲得戦略と人材定着戦略を考える必要があるのか?

雇用の安定は特にこの不安定な時代に重要なことですが、弊社の調査によると、この時代であっても多くの人が転職を検討していることが明らかになりました。「人材トレンド2021」によると、現在雇用されている人材の56%が積極的に転職活動を行っているほか、36%も良い機会があれば転職を検討するとしているとしています。自発的に仕事を辞める理由として最も多いのは、企業内で成長の機会がない、より充実した福利厚生を提供している企業で働きたい、社員の幸福度に関しての企業側の配慮が欠けているなどです。

また、企業は離職にかかるコストを過小評価しがちです。情報を駆使する仕事であればあるほど、社員が離職したときの生産性への悪影響は大きく、新たに採用する人材のサーチや入社手続きに多くのリソースを割かなければなりません。また、競合他社に人材を引き抜かれる場合、事業やオペレーション面の戦略、企業文化などの内部情報を競合他社に提供することになってしまいます。また、人材の定着率は、既存社員やこれから採用する可能性のある人材にとって、長期的に働く価値のある企業であるかどうかを判断する材料にもなります。
 

会社の長期的な成長には人材獲得戦略が必須

優秀な人材の数は少なく、その限られた人材はあらゆる情報を集めて転職先を選り好みする傾向があります。包括的な人材獲得戦略を実現できていない企業は、それが実現できている競合他社に最も優秀な人材を引き抜かれてしまいます。このことは、親の世代よりもはるかに企業に対するロイヤルティが低いミレニアル世代が労働力人口の多くを占め始めたことで、より顕著になっています。適切な人材獲得戦略を取り入れることで、社員の定着率や生産性、さらには幸福度にもポジティブな効果が見られるようになるでしょう。

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